真正ピラミッドの設計方針と運搬路の論文の要約
Ⅰ)、 要約
ピラミッドの高さの単位を,古代のエジプトの長さの腕尺で表して、3単位(1.572m)に設定すると、クフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッドの地上部分の段数は(93+1/3)段、(91+1/2)段、(41+2/3)段となる。また、クフ王のピラミッドの底辺は、「 高さを半径とした円周の1/4」 、カフラー王とメンカウラー王のピラミッドの底辺は、高さの1.5倍と1.6倍の長さになる。さらに、セケド(勾配)は、クフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッドで5 5 、5 、バームとなる。セケドの計算で使われるロイヤルキューピット(腕尺)の単位が7バームに設定されている理由は、クフ王のピラミッドのセケド(勾配)を作図により導き出す方法が根拠になっていることが明らかになった。さらに、円周の長さは円周を実測して求め、円の面積は半円形を扇形として、その二等辺三角形を分離して、その面積を幾何学的に計算する方法から求められている。これらの方法を使って、クフ王のピラミッドの底辺は、高さを半径とした円周の長さの1/4であることが明らかになった。
次に、建設資材の運搬のために、幅が約3.7m、勾配が約3.6度の第1の運搬路を設計して、これをピラミッドの1面の仮設の突出部分に、13段目(141.48m)から93段目(地面)まで設計した。この運搬路は、幅と勾配が一定であるため、建設資材の運搬は容易である。また、他の3面の34段目から93段目までは幅が3.7m、勾配が3.6度、および、13段目から23段目までは幅が2.5m、勾配が7.28度の第2の運搬路を、壁面に密接して設置する設計をした。この運搬路には、突出部分がないため、構築のための石の量が少なくなる。さらに、3段目から13段目までは、幅が2.5mと一定であるが、各段の勾配が6.32度から27.27度の階段の運搬路を設計した。これによりピラミッドの4面に運搬路が設置できる。そのため、単位時間の石の運搬量は1経路の場合の4倍となり、建設期間は1/4に短縮される。さらに、外壁の石の設置、角度の設定、壁面の装飾などの外枠として使用されたと考えられる。また、第1と第2運搬路を併設して造る構造の体積は、ピラミッドの体積の約21%となり、第2運搬路を4面に設置する構造の体積はピラミッドの約8%となる。
次に、ピラミッドと運搬路の設計、計算、測量、建造、石の加工などを容易にするためには、高さと底辺の長さの単位を端数の無い整数にする必要がある。そのため、これらの尺度を独立させて使用した。
Ⅲ)、はじめに
ピラミッドを建造するには、高さと底辺の長さ、および、勾配(セケド)を決める必要がある。高さは段の単位と段数で決まり、底辺の長さは、底辺の長さの単位と単位数で決まる。セケドは、直角三角形の底辺の長さで表される。これらの数値を明らかにすることで、大きさの決定方法を解明することができる。そのため、高さと底辺の長さの測定値を基に、高さと底辺の長さの基準値とセケドを計算した。また、セケドは角度を表す数値であると共に、底辺と高さの比を表している。そのため、発表されているセケドの数値を基に底辺の長さの計算を行った。さらに、高さと底辺の長さの設定方法は、真正ピラミッドに共通していると考えられるため、同じ方法で大きさの数値を導き出した。次に、セケドの計算に使われているロイヤルキュービットの単位が、7バームに設定された根拠が明らかでない。 これについて、クフ王のピラミッドのセケドの算出方法を基に、その数値が決定された根拠を検討した。また、クフ王のピラミッドの底辺の長さの総和は、高さを半径とした円周の長さに等しいと考えられる。これを確認するため、正確な円周の長さと円の面積を、幾何学的に求める方法を導きだして、その検証を行った。また、巨大なピラミッドの設計と計算、測量、建造には、数値が大きいと複雑になる。その解決策として、高さと底辺の長さの尺度を独立させて使用した。これにより、段数、高さ、底辺の長さは共通の整数となる。この尺度の使用により、ピラミッドの大きさの計算、設計、高さと長さの測定、セケドの設定、石の加工、建造、運搬路の設計などが容易になる。
次に、石を運ぶために、古代のエジプト人が、どの様な運搬路を求めたかを考察した。長期に渡る重労働をするためには、建設方法が簡単で、運搬がし易く、建設期間が短く、時間単位の運搬量が多く、建設資材が無駄にならず、また、トラブルに対処し易い構造が必要と考えられた。そのため、ピラミッドの4面に併設して、斜面状の規格化した運搬路を造り、それを階段状に設置して、完成後に撤去できる構造を設計したと推測した。その構造として、幅と勾配を一定にするために、ピラミッドに仮設の突出部分を造り、それに設置する第1の運搬路と、突出部分に要する石を省き、さらに、勾配を一定にするために「幅、高さ、底辺の長さ」を変えて、ピラミッドに直接設置する第2の運搬路を設計した。また、13段目から上への段の辺の長さは短いため「高さ、底辺の長さ、勾配」を変えて、幅が同じになる運搬路を設計した。また、これらの運搬路とは別に、大きな石を運ぶ運搬路を設計した。
以上について、計算による解析方法を使って考察を行った。