クフ王のピラミッドは半球形を基に設計
底辺は高さを半径とした円周の1/4
パピルスの48問で、書記アーメスがπを3・1/6に設定した方法について計算で検討した。50問でアーメスは直径が9の円の面積は1辺が8の正方形の面積に等しいと仮定している。そのため、円の面積の計算 は (9/2)²×π=8×8で表される。この結果から円周率はπ=64×4/81=256/81=3.1605となる。この3.1605をアーメスは3.16として円周率とした。この円周率を使って、クフ王のピラミッドの高さの146.7を基に、底辺の長さを求めると、2×3.16×146.7÷4=231.786となり、測定値の230.36より1.426長くなる。もし、3.16を正規の円周率の数値として計算していたとすれば、底辺の長さの231.786は設計された正しい数値と判断される。その結果、計算値と測定値が一致しないことになり、これを根拠に、測定値は計算で導き出された数値ではないと考えられて、「底辺の長さは、高さを半径とした円周の長さから求められていない」と判断されたと考えられる。しかし、このことは近似値の円周率を使ったことによる結果で、正確な円周率の3.14を使って計算をすると、2×3.14×146.7÷4=230.32となり、測定値の230.36と同じで、正確な計算結果となる。しかし、円周率と2πrの概念の無かった時代に、正確な円周の長さを求めるには、2πrの計算方法とは別の解決策が必要となる。それは円周を実測する方法と考えられる(図-4)。この方法を使って、円周の長さの基本単位を決めて 「 円周の長さ= 円周の長さの基本単位 × 段数 」 の計算により、2πrの計算結果と同じ数値の長さを設計したと考えられる。また、円周率について 【π=256/81=3.16049の値はエジプトの数学を通じて常に採用されているというわけではありません。グレコ・ローマン期になるとπ=3が採用されている例があります。円の面積の公式は(8/9d)2 よりも3/4d2が使用されることが多くなり、1500年前より後退している 】 と報告されている(文献-3、p-105、106)。 巨大なピラミッドの建設には、正確な設計が必用である。そのため、近似値を使った円柱の体積の計算方法を、巨大なピラミッドの設計の計算に当てはめて、比較検討する考え方には無理がある。このことについては、前述した書物の中に【 近似値の精度は、とどのつまり数学的、および、建築学的成果を計るよい尺度ではないので、エジプト人の業績のこの面ばかりを強調しすぎることがあってはならない】 と書かれている(文献-4、p-25)。また、クフ王のピラミッドの底辺と高さの関係が、半球形以外の形を想定して設計されたとした場合、底辺の長さと高さの比が1.571となる形を作り出すことは難しい。底辺の長さと高さの比は、カフラー王とメンカウラー王のピラミッドの1.5と1.6の間の1.571である。この数値は円周の長さから計算すると無理数となり、カフラー王とメンカウラー王のピラミッドのように、簡単に底辺の長さと高さの比を決めることのできる数値ではない。従って、円周の長さを使って、底辺と高さの関係を作り出す方法を除いて、別の方法でピラミッドの形を作図することは不可能と考えられる。さらに、「底辺の長さは高さを半径とした円周の長さの1/4」の関係を使って、作図でセケドを求めることはできるが、計算で求めることは出来ない。以上のことより、「クフ王のピラミッドの底辺の長さは、高さを半径とした円周の長さの1/4 」 とする説は証明されたと考えられる。